アインシュタイン
尊敬は一種の思考停止だと思っている。誰かを尊敬することは、つまり、その誰かの言動や行動を無批判に肯定することにつながり、少し危うい。
そんな自分でも、アインシュタインのことは尊敬している。
言わずと知れた天才物理学者、史上最高の頭脳の持ち主ーーーだから尊敬しているわけじゃない。
アインシュタインの名言集を読んでいると、これが心に刺さる。
“常識とは、18歳までに集めた偏見のコレクションである”
“重要なことは疑問を止めないことである。探究心は、それ自身に存在の意味を持っている”
“同じことを繰り返しながら、違う結果を望むこと、それを狂気という”
ここらへんはかなり好きな言葉だ。
自分は地方の大学生なのだが、在籍している学部が何というか、自由にモノを考えることが許されない場所だった。
表向きそうは見えなかったらしいが、学生生活は辛かった。その学部における学生の自殺率が高い理由について、徹底的に考え抜いたこともある。
周囲が全員キリスト教徒で、自分一人だけイスラム教徒、という状況を想像してみて欲しい。そしてその環境で、周りの様子を窺いながら20代の大半を過ごしてゆくことも。
さすがにそこまで大袈裟ではないが、質的にはそんな感じの辛さがあった。
“私はいま孤独の中に生きています。若者には苦痛ですが、成熟した人間にとっては、甘美な孤独の中に”
アインシュタインについて本を読んだりネットで調べていると、何だか同じような思いをしているんだな、と思えて救われた気分になる。それが自身の心情を映した幻想に過ぎないかもしれないとはいえ。